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手術のススメ ~変形性股関節症~

  • muratsubaki1002
  • 2022年6月23日
  • 読了時間: 5分

更新日:2023年2月3日

前回の投稿で「基本的に手術は避けるべき。どうしようもなくなった時の最後の手段」と書いておきながら、今回は手術のススメ???と思われるかもしれません。


基本的なスタンスは「手術は避けるべき」ですが、様々な状況を勘案したとき、手術をした方が良いと判断して、ご提案したことが過去に2回ありました。

お二人ともに変形性股関節症の人工関節置換術をされたのですが、その後の経過は良好で、手術を機に状況が大きく改善されました。おひとりは当院HPの「症例ページ 姿勢/動作改善」でご紹介させていただいていますのでそちらもあわせてご参照ください。


それではその方のケースを少し詳しくご紹介します。

その方が当院にご来院されたきっかけは「側弯による歩行困難」で変形性股関節症ではありませんでした。歩いていると強い痛みは無いけれど身体が左に偏って歩けなくなってしまうという深刻な状態。私の脚で徒歩5分の距離をその方は当時約1時間かけていました(現在は15分にまで改善)。

お身体を触れてみるとすごく柔らかい(柔らかすぎる)筋肉のなかに、体幹に極端に硬く縮まった筋肉が複雑に織りなすように存在し、下部胸椎から腰椎全体が中心から押しねじ曲げられて右の背中に押やられたような状態でした。


その当時から施術により硬さを緩和すると姿勢の改善は少しずつ見られていました。ただ、姿勢の良化が進んでいったある時、その方がそれまで見られなかった痛がり方をして歩いている様子に目が留まりました。聞くと「股関節のところがチクっと痛い」とのこと。私が気になったのはその痛がり方でした。痛みにも様々なパターンがあり、見分けは非常に大事なポイントなのですが、その方のその時の痛み方は身体(股関節)の中に明らかに壊れている組織があることを示唆していました。

おそらく、「崩れていた姿勢(側弯)ではその傷に刺激が加わらないから痛みを発していなかったが、姿勢が良化し直立に近づくと股関節が本来の位置で嚙み合ってその部分に刺激が加わるようになって痛みが出た」のだと推察しました。

施術では詳しく過去のお身体の状態についてお話を聞き掘り下げることもあるのですが、この方は側弯以前に腰部脊柱管狭窄症で極めて強い脚の痛みを抱えていた時期があり硬膜外ブロック注射を何度となく打っていた経験や膝や股関節にも痛みがあったりという痛み遍歴がありました。

しかし病院などでは一番見て目で分かりやすい「側弯」が注目され、側弯の手術のほうを勧められている状況でした。私も当院にいらしてからは股関節の痛みを訴えなかったことや股関節の可動域も十分あったため股関節はノーマークでした。

しかし股関節を痛がるその様子や施術に対する反応などから私の頭の中に「変形性股関節症」があるのではないか?と疑念が浮かびました。そこでその方にもその点をご説明し、一度主治医のところでレントゲンを撮ってもらうことになったのですが、主治医の回答は「過去に側弯/脊柱管狭窄症のレントゲンを撮った際に股関節も映っていてそれを見返しても問題ないから再度のレントゲン撮影は必要ない」を断られてしまったのです。それでもクライアントも私の説明が腑に落ちていたため、別の病院に足を運んで下さいました。その結果、「両股関節ともに末期の変形性股関節症。このままいくと大腿骨頭だけでなく骨盤側にも影響が出るレベル。すぐに手術」との診断を受けました。それほどの状態とは私も想像しませんでしたが、この診断で私としても手術が妥当だと確信できました。


手術は人間が持って生まれた精緻な人体メカニズムに手を加える行為であり、可能な限り避けるべきものだとは思います。ただし、その方の今後の人生を考えたとき、役に立つと思えた時は丁寧に状況と展望をご説明して手術をススメます。

※ちなみにこの方は独居なのですが、深刻な状況に施設への入所も検討されている状況でした。


この方のケースでは3つのポイントが判断材料になりました。

① 損傷した組織と痛みの出方がつじつまが合いクリアになったこと

② 施術により姿勢が良くなって歩きやすくなると股関節に痛みが生じ、姿勢が改善しなければ身体が左に傾き歩けない。このような追い込まれた状況だったこと。

③ その方のポジティブなキャラクターが手術を人生の転機にできると確信できたこと。


個人的には③が一番重要ではないかと思っており、この資質が無い方には私は手術は勧めません。「ポジティブなキャラクター」とは、「自分の頭で状況を理解して、前向きに(もしくはなんだかんだ言っていても最後は自己責任で)行動できる」性格の持ち主ということになるでしょうか。

整形外科疾患の手術は手術をしたらそれでOK。痛みとおさらば。というわけにはいかないケースが少なくありません。術後のリハビリはとても重要ですし、退院後も場合によってはそれ相応のケアが必要になります。手術の原因に習慣的な姿勢や動きが大きく影響している方の場合、手術後にも似たような箇所や別の箇所に痛みが生じる場合が少なからずあるのです。その時、手術を決断した際の心持ちやその方のキャラクターがとても重要になってくるのです。術後の生活を主体的かつ積極的に送れるようであれば、かりにどんな問題が起きてもいくらでもサポートは可能ですが、そうでないと術後の人生が非常に苦しいものになってしまいますので。

そのため私は必ず(と言っても過去に2例ですが)手術をススメル際に、手術に至る経緯や原因(姿勢や動作などの様々な習慣)、手術で解決できる問題と手術後に残りえる課題を理解してもらった上で手術を決断していただけるようにお身体を診ますしご説明もしています。


今回の事例の方のその後は当院HP の「症例ページ 姿勢/動作改善」でご覧いただけます。姿勢の改善の妨げとなっていた股関節の痛みが無くなったことで姿勢や歩行の機能は大幅に改善し、今なお年齢に抗うようにその傾向は維持されています。ご苦労はまだまだ少なくありませんが、二人三脚で今後も成長できそうです。


手術をお勧めしたもうお一方のエピソードはまた少し手術に至る経緯が異なりますので別の機会にご紹介しますが、その方もポジティブなキャラクターの持ち主で、今は積極的に外出されて人生を楽しまれています。

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